太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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能力、努力が「見えない」時代に

 プロ野球のオープン戦が始まった。毎年この時期には、大活躍して今年こそブレークしそうな選手がスポーツ紙の一面を飾る。ところが公式戦が始まると、サッパリ調子が上がらない。逆にオープン戦ではこれで大丈夫かと心配されていたベテラン勢が、公式戦になるとしっかり結果を残す。
 オープン戦と公式戦は本気度が違うと言えばそれまでだが、ほかにも理由がある。能力の質が違うのだ。駆け引きの少ないオープン戦で活躍するのは、パワーや走力といった比較的単純な身体能力の優れた選手である。それに対し、公式戦で活躍するのは読み、適応力、気迫、メンタルなタフさといった能力や資質に秀でた選手である。

 これはスポーツに限ったことではない。いや、スポーツ以外の世界ではその差がいっそう顕著になる。そして見過ごせない問題に発展する。
 企業では、価値の高いアイデアを出す人は正直なところごく一部に限られているといわれる。役所の窓口では、大半の職員が住民との間でトラブルに巻き込まれるなか、なぜかまったくトラブルを起こさず仕事をスムーズにこなす人がいるそうだ。
 
 企業や役所ではもちろん、教育や科学、医療などの分野でも、このように実践で力を発揮できる人を評価し、選別、育成しようと真剣に取り組まれている。しかし現状を見ると必ずしもそれが成功しているとはいえないようだ。
 それは、いちばん大事なポイントを見逃しているからである。大事な能力が「見えない」ということだ。しかも、「大事な能力は見えない」という現象がいま、決定的な事実になろうとしている。
 その原因は、やはりIT化である。今ごろなんと陳腐な話を・・・・・と思われるかもしれないが、ITは文字どおり日進月歩で進化している。それどころか、人間の能力への代替という面から見ると、むしろ加速度的に進行しているといえよう。人工知能の発達によってコンピュータが難関大学にも合格するし、小説も書くという時代である。
 ただコンピュータにも限界がある。アウトプットを生む仕組みが解明できなければIT化、デジタル化できないということだ。逆にいえば、インプットとアウトプットの結びつきがわかればすぐさまITに取って代わられるわけである。

 要するに、インプットとアウトプットの結びつきがブラックボックスのなかで行われる人間特有の能力こそ人間に求められ続ける。したがって、私たちは重要な能力こそ見えないものだということを理解しておかなければならない。
 そうすると、現在行われている入学試験や採用試験、評価制度、人事管理などはことごとく通用しなくなる。それどころか、逆に有能な人材を排除したり誤った方向へ導いたりするおそれがある。大事な能力や努力は「見える」という旧来の能力観に立脚しているからである。

 大事な能力、努力が見えない時代を迎え、社会のシステムをどう変えていくべきか。これからも考え、発言し続けていきたい。

(2015/3/2)
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  1. 2015/03/02(月) 11:01:39|
  2. 日本の将来
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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