太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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別れ

 先日、伯父の7回忌の法事で住職の法話があった。老僧は私が高校時代の担任であり、33年ぶりに恩師の「説教」が聴けたので、高校時代とは違ったありがたみを感じた。
 当日はJR福知山線事故で犠牲になった人の四十九日にあたるため、遺族の声が新聞に大きく掲載されていた。老僧はそのなかの一つを紹介しながら、「生と死は対極にあるのではなく、一体のものだ」と説かれた。
 このような話は、観念の世界のなかだけにとどまってしまいがちだ。ところが今、それが俗世間でも実感できる時代がきているように思う。
 私たちは、相手と直接対面しているとき以外は、相手の存在を確認することはできない。
ただ記憶と想像のなかで生きているに過ぎないのである。先ほど会った人が、実際にはこの世にいなくなっている可能性もある。そして、ビデオなどが普及した今では、亡くなった後でもその人の声や姿に接することができる。もちろん対話はできないが、もしかすると将来は、生前のデータにもとづいて会話するようなロボットが登場するかもしれない。
 日常の「別れ」もあいまいになっている。港で見送る人と見送られる人とがテープを切り、だんだん小さくなっていく姿を見て涙するのは感動的だ。それが今では、動画付きの携帯で話しながら見送ることができる。そうすると、「別れた」という実感は湧かない。
 永の別れにしても、しばしの別れにしても、それがあいまいになれば、悲しんだり寂しがったりすることは少なくなる。では、それだけ幸せになったのか? 私は、そうとは言いきれないように思える。会えないからこそその人への想いも深まるが、いつでも会えると思うとそれがない。いくら会えないつもりでいようとしても、心のどこかに「会える」という気持ちがあれば、それは不可能なのだ。
 人間はだれしも、悲しみや寂しさをできる限り避けたいと思う。しかしそれを避けていると、必ずその報いがくる。仏教に限ったことではないが、別れを印象づける宗教的な儀式には、そうした教訓が込められているのだろう。慣れない正座からくる足の痛さに耐えながら、そんなことを考えていた。
(2005.6.13)
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  1. 2005/06/13(月) 13:30:23|
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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