太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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恩義

 最近、企業の現場では技能の伝承が滞り、深刻な問題となっている。先輩が後輩に技を教えなくなったのだそうだ。その理由として、仕事が忙しくなり教える余裕がなくなったとか、成果主義で先輩と後輩がライバル関係になったことをあげる人が多い。
 しかし私には、別の要因もあるように思える。技を教えてもらっても恩義を感じない若者が増えているからではなかろうか。恩義といえば古くさい印象を与えるかもしれないが、社会学的にいえば一種の交換関係である。教えてもらっても恩や義理を感じなければ、だれも親身になって教えてやろうと思わないのは当然だ。
 若者だけに責任があるわけではない。仕事の現場にはもともと自生的な人間関係があり、そこで日常的な交換が成立していたにもかかわらず、それを無視して(あるいはそれに気づかず)トップダウンで制度を導入したことのツケが回ってきたのではないか。職場の日常は、人事部やコンサルタントが考えているよりもはるかに緻密で合理的に動いている。外来の制度でそれを根絶やしにすることは、外来種の輸入で生態系を破壊してしまうのと同じだ。
 では、どうすればよいか。私は職人の世界の師弟関係のようなものをもう一度取り入れてはどうかと思っている。それが必要以上に個人を縛るようになってはいけないが、せめて技を教えてくれた人に感謝し、定年後も盆暮れの挨拶をするくらいのつながりはあってもよかろう。実力主義や成果主義によって、優れた技を教えられた人は直接その恩恵を受ける時代になったのだから。
(2005.8.26)
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  1. 2005/08/26(金) 13:38:30|
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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