太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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地方分権に異議あり!

 今朝の新聞によると夕張市役所では職員の退職が相次ぎ、このままでは役所そのものが崩壊する恐れさえでてきたそうだ。また、職員によっては給与が生活保護受給基準の最低生活費を下回っているという。私はこうしたニュースを見るたびに、「地方自治っていったい何なんだ」と、疑問よりむしろ憤りを覚える。
 最近、ふるさと納税制度や国と地方の財源見直しなど地方分権に関する論議が活発になってきた。しかし、そこで発言するのは、都道府県の知事をはじめ自治体関係者が中心だ。知事を筆頭とした自治体関係者にとって、自分たちの権限が大きくなる地方分権は大歓迎にきまっている。とくに大都市圏の人々とその利益を代表する首長が「分権大賛成」「ふるさと納税反対」を唱えるのは当然である。
 しかし、地方自治や地方分権はほんとうに国民のためになっているのだろうか? とりわけ国民の平等や公平の精神と矛盾しないのだろうか?
 分権の歪みはいたるところで表面化している。たとえば大都市の高齢者は無料でバスに乗れるが、地方に行くと独居老人が一日わずか数本しか運行されないバスに片道千円以上かけて乗車し、病院通いしている。病院や医師の充実度に加えて、ガンなど生活習慣病の検診制度、介護保険料など住民の命や健康に関わる部分でも地域間、自治体間の格差が拡大している。
 こうした格差を目のあたりにしても、自治体間でサービスを競い、住民はそれを選択して移動すればよいとか、財政力やサービスの格差は住民全体の責任であるといった、現実離れした発言をする人がいる。
 前者の発言は、自治体と会社とを同一視するとんでもない議論だ。会社でさえ簡単にかわれないのに、それぞれ仕事や学校がある家族がそう簡単に住むところを選べるはずがない。まして何代にもわたって田畑や地域を守り続けてきた人たちに、まともな生活がしたければ都会に移れと言えるのか。
 後者の住民責任論も、まったくの仮構の上に成り立っている。かりに住民一万人の自治体なら、住民個人は一万分の一しか発言力がないのに、どうして責任をとれというのか。夕張の財政破綻にしたって、住民にその責任を押しつけ、窮乏や不自由を強いるのはおかしい。
 暴論だと批判されるだろうから公式の発言は避けてきたが、私は昔から地方分権そのものに反対である。最大の理由は、個人の責任によらない機会の不平等を押しつけるからである。また、特権的(自分が築いた地位ではないという意味で)な強者の論理に陥るからでもある。では、地方分権を見直して、地方の声や特殊性をどう政治に反映させるのか? それについては別の機会に私見を述べることにしたい(部分的には『囲い込み症候群』などでも触れたが)。

(2007/7/9)
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  1. 2007/07/09(月) 10:15:34|
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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