太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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「ほしがりません、勝つまでは」

 国家公務員の給与が9年ぶりに引き上げられることになったが、幹部については「厳しい財政事情や国民感情を考慮し」引き上げを見送るそうだ。それでは逆の環境、すなわち「財政が大幅黒字で大盤振る舞いを国民が支持する」といったことが現実にあるのだろうか? そもそも、財政赤字の責任をなぜ公務員だけがとらなければならないのか、私には理解できない。役所が税金だけ取って何もしなければ赤字にはならないのだから、財政赤字はよく仕事をしていることの証と強弁できないこともない。
 それはともかく、外圧を理由に耐乏を強いるワンパターンが最近横行するようになった。たとえば、「警察の信頼が問われている昨今」とか、小中学校の教育現場では「教育をめぐる環境が厳しい今日」、大学では「大学改革のまっただ中にある今」などまるで枕詞のように使われている。権力者、そして組織を思うままに動かしたい人たちは、このように危機感を煽ってなし崩し的に事を進めようとするものだ。ときにはマスコミや世論をうまく誘導しながら。
 さすがに好況が続いているので、「経済環境が厳しい今日」とは言えないはずだが、そこでは別の論理が展開される。景気回復後も企業の賃金水準はさほど上がっていないが、グローバル化に伴って競争が厳しくなり、それを勝ち抜くためには利益を内部留保と投資に回さなければならないからだという。けれども明治時代には、「欧米列強に互していけるようになるまで労働者はがまんすべきだ」と言ってきたし、戦中は「ほしがりません、勝つまでは」と庶民に窮乏を強いてきたではないか。要するに、見方によればいつもが危機、変動期なのであり、そのしわ寄せを「弱者」が被ってきたのである。
 なぜ「弱者」か? 結論を急ぐなら、それは逃げ場がないからである。かりに労働市場が開かれていて、また再挑戦のチャンスが広く存在したなら、組織や権力者は無理な耐乏を強いることはできない。優秀な人材は、辞めて条件の良いところに移ってしまうからである。
 では、労働市場の開かれていないところではどうすればよいのか? イデオロギカルになるのは避けたいが、結局は労働者の団結、そして庶民が「明日はわが身」という意識をもって、安易に足の引っ張り合いに参加しないことだろう。

(2007/11/1)
 
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  1. 2007/11/01(木) 10:32:42|
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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