太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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「原則管理」と「原則自由」の重み

 アメリカやヨーロッパ、それに中国、東南アジアでも街を歩いていると、日本にいるのとはどこか違った空気を感じる。電車に乗っても店に入っても同じだ。それが何かわからなかったが、あるとき気がついた。やはり、自由なのである。人々がそれぞれ、そこにいて生活しているだけで、管理するものの存在が感じられない。たとえ何かが起きたとしても警察も行政機関も制御できないのではないかと、ときどき心配になるが、人々が互いに自己規制し合いながら生活しているので意外と大丈夫なのだろう。
 それにひきかえ日本では、どこへ行っても釈迦の掌に乗っているようで、つねに管理された中で生活している。電車に乗れば携帯の電源を切れだの、男は乗るなだのと命令されるし、店に入れば店員がどこまでもついてくる。そして、だれも従順にしたがうし、いやな顔もしない。それが当たり前になっているからだ。若者たちが闊歩するあの秋葉原だって、例の事件によって歩行者天国は廃止されたが、大きな反対の声は聞かれない。
 欧米や中国などと日本の違いを一言で表現すれば、「原則自由」と「原則管理」との違いではないか。それは働く場にもいえる。欧米などの組織は、自分の仕事をするための場という感覚である。それに対して日本では、まず会社や役所という組織の一員となり、その中で与えられた仕事をする。「原則管理」の象徴が公務員に課されている「職務に専念する義務」である。勤務時間中は職務に専念しなければならず、勤務時間中の自由は「職務専念義務免除」によってのみ与えられる。極端にいうなら、「専念」していれば仕事ができなくてもよいが「専念」していなければいくら良い仕事をしても懲戒処分を受けるわけである。これでは公務員に「気をきかせろ」とか「挑戦してみろ」といっても無駄なはずだ。
 この「原則自由」と「原則管理」、すなわちもともと自由なころから出発し必要な範囲で制約を受けるのと、管理された中から支障のない範囲で自由を認めるのとでは、たとえ同じように見えても大きな違いがある。
 独裁政権で言論の自由や行動の自由が厳しく制限されているところでも、「原則自由」から出発している社会では市民が自分の頭で考えて行動するが、「原則管理」から出発している社会では人々が自由を謳歌しているように見えて、実はいたるところで管理され、「学習された無力感」からくる他者依存に陥っている。日本人の実質より周囲の目を気にする働き方や行動様式、それに減点主義の評価や「出る杭を打つ」風土もそれと関係しているように思える。
 近著でもそのことに触れるつもりである。

(2008/10/18)
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  1. 2008/10/18(土) 19:06:30|
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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