太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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何のための教育か?

 全国学力テストの結果を公表すべきか否かで議論が分かれている。公開すべきだという論者は、自治体間で競争し、それによって全体の教育レベルが上がればよいではないか、という考えをもっているのだろう。テスト結果の公開・非公開をめぐる議論は、公立学校で進学のための特別授業を行うことの是非をめぐる議論とも根は同じだ。
 たしかに、そこでいう「教育」が本人の成長や社会の発展・幸福につながるような教育なら問題はあまりない(まったくないわけではないが)。自治体間で競争し、行政も地域もそれを支援すればよいかもしれない。しかし、現実には「教育」の中には受験のための教育が含まれ、それが控えめにみても相当な割合を占めている。受験という定員がかぎられた中での競争は、だれかが合格すればだれかが落ちるという典型的な"ゼロサムゲーム"である。極論するなら、ライバルが4時間しか眠らなければ自分は3時間しか眠らないというように、どちらかが倒れるまでがんばらなければ通らないというのが"ゼロサム"型の競争である。
 そうした激しい競争が当人や社会のためになるなら、それでよいかもしれない。しかし、残念ながら受験勉強や受験で問われる能力をつける「教育」の延長線上には、前述したような本人の成長や社会の発展・幸福につながる「教育」があるとは思えない。逆に、過当な競争に参加しない者が本来の教育を受け、希望する職に就く機会を奪われることにもつながる。
 だとしたら、民間企業ならともかく、公益を目的とする行政がそうした競争をあおったり、競争に勝つことを手助けすることにどんな正当性があるのか。へたをすると、「受験戦争」の弊害を大きくし、また競争の機会格差を広げるのに行政が手を貸すことになるかもしれない。
 現実に行われているのが<何のための教育なのか>を深く追究すべきではないか。そうしなければ、「健全な競争がなぜ悪い」「できる子を伸ばすことも大切だ」という素朴な常識論が独り歩きする。

(2008/12/16)
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  1. 2008/12/16(火) 12:10:14|
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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