太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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コミュニケーション

 大学生の就職内定率が急落している。「新卒」扱いしてもらうために留年する学生も増えている。一方では、就活対策として自己アピールの方法などコミュニケーション能力を高める講座がはやっているそうだ。
 そこまでしなければならないのかと思う人もいるだろう。だいじなのは思考力や専門知識であって、コミュニケーションはそれを伝達する手段に過ぎず、運転免許のようなものだと考えている人もいる。私もかつてはそうだった。けれども最近は、それが間違いではないかと考えるようになった。
 私たちは仕事においても、ふだんの生活でも、命に関わるほど大切なことでないかぎり人間関係や成り行き、感じのよさといった必ずしも合理的でないもので決めているのが現実だ。いや、命に関わる問題だって例外ではない。たとえば重病にかかり医療の質が生死を左右する場合でも、セカンドオピニオンを求めたり、最高の医師を探したりする人は多くない。転院の煩わしさや担当医との人間関係などが頭から離れず、適当な理由をつけて自分を納得させてしまう。
 日常の仕事や生活ならなおさらだ。企業が社員を採用する際、面接の担当者は相手がどれだけ優秀か、自社に貢献するかより、好き嫌いやフィーリングを重視するかもしれない。商談や取引も、こまめに連絡を取り誠実な対応をするかどうかで決まることがある。
 つまり、内容が「主」、コミュニケーションが「従」という常識とは違って、実際はむしろその逆のケースが多いのではないか。
 また、積極的に自己アピールするうちに態度や行動が前向きになったり、コミュニケーションの中で思考が練られたりするものだ。コミュニケーションが内容を変えるわけである。
 そう考えたら、私たちはコミュニケーション能力を磨くのにもっと投資してもムダではないはずだ。

(2010/3/31)
 
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  1. 2010/03/31(水) 11:46:27|
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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