太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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サラリーマン下克上の時代

 会社の従業員にアンケートをとると、ちょっと背筋が寒くなることがある。自由回答欄には、エリート層への反発、そして彼らを優遇する会社への不満がたくさん述べられているのである。もちろん声の主は、いわゆる一般職や、非正社員、低学歴者などのノンエリートたちだ。

 以前はこんなことはなかった。なぜ、エリートへの反発、不公平感がこれほど広がったのだろうか?

 最大の原因は、拙著 『「不良」社員が会社を伸ばす』 (東洋経済新報社、2010/10)で詳しく述べたように、求められる「能力」「意欲」の質が今、根本的に変化しているためである。

 実力がものをいう自由業・自営業の世界や一部の新しい企業では、これまで日の当たらなかったノンエリートたちのなかからほんとうに優秀な人材が続々と台頭する一方、かつての「エリート」たちが居場所を失っている。
 私もこの年になっていろいろな同窓会に出席する機会が多くなったが、元気があって羽振りがよいのは昔はあまり勉強できなかった(しなかった?)者で、かつての優等生はどちらかというと影が薄い。

 そして「エリート」たちが裸の王様になったのは、ノンエリートたちが彼らの正体を知る機会が増えたためではなかろうか。
 最近は幹部候補生にも、若いうちに現場を体験させるためノンエリートたちと一緒に仕事をさせる企業が多くなった。また職場に派遣やアルバイトなど非正社員が増えてきた。そのため、「エリート」の仕事能力がノンエリートの自分たちとさして違わないこと、場合によってはむしろ自分たちのほうが実務能力に長けていることを実感したのだろう。にもかかわらず、「エリート」として特別扱いされ、自分たちと待遇も大きく異なるのであれば当然、理不尽な格差・差別だと思うようになる。

 いずれにしても、「能力」と処遇のギャップが明らかになった以上、「エリート」の再定義が必要なことは間違いない。「サラリーマン下克上の時代」である。

(2010/10/18)
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  1. 2010/10/18(月) 18:17:09|
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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