太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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やらされ感の源

 明けましておめでとうございます。

 新しい年を迎え、今年こそ何かを続けたいと決意されている人も多いのではないでしょうか。
 私も、昨年の暮れから始めたジム通いをなんとか続けたいと思っています。

 しかし、会員制テニスクラブ、洋雑誌の年間購読、年会費の美術館会員など途中で(というより、始めてすぐに)挫折した経験もたくさんあるだけに不安です。
 続かなかったケースを振り返ってみると、かなりの初期投資をしたことが共通しています。最初に年会費を支払った、高額な用具を購入した・・・などです。
 当初は張り切っているし、初期投資をしたら中途で辞めると損なので長続きするだろうと考えます。ところが、そこに盲点があるのです。たしかに、最初のうちは「元を取らなくては・・・」とがんばります。けれども、だんだんとそれが負担になってきて、やがて奴隷のように「やらされ感」だけで続けるようになります。それがある臨界点に達したとき、あるいは何か自分を正当化できる理由が見つかったとき、「投資は捨てたと思えばいい」と割り切り、辞めてしまいます。いったん辞める決心をしたら、二度と行ったり使ったりすることはありません。

 私の経験では、テニスクラブには年会費を払って2,3回しか行かなかったのに、毎回500円払って参加するテニススクールはかなり長期間通いました。当然ながら毎回払いのほうは「元を取らなくては・・・」という負担感がないので参加するのが楽しみでした。しばらく休んでも、また通いだしました。

 私のほかにも、ジムやテニスクラブに年会費を払ったが、すぐに辞めてしまったという人が大勢います。年会費制のジムやテニスクラブのなかには、設備は立派だけれど閑散としているところが多いものです。会費は払ったけれど辞めてしまう人がたくさんいるので、設備にお金がかけられるのでしょう。うがった見方をすると、会社は「やらされ感」が高じて辞めていく心理的メカニズムを知っているからこそ年会費制にしているのかもしれません。

 ところで、同じようなメカニズムは雇用関係にも見られます。日本の会社では、いったん社員を採用したら簡単に解雇することはできません。いっぽう社員の側は、制度上はいつでも辞められますが、辞めたら再就職するのがたいへんだし、年功制のもとでは給与だけでなく退職金や年金の面でも大きな損になります。したがって心理的には、「辞められない」という意識が強いのです。
 ただ、ジムやクラブと違うところは、生活がかかっているので簡単に辞められないことです。そのためジムやクラブ通いとは違う、独特な行動をとるようになります。
 
 拙著『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)では、日本の労働者の「勤勉さ」や「意欲」をこうした視点も加えながら分析してみました。賛同していただいた方が多かったのは、上述のような経験を持つ人がたくさんいるためかもしれません。

(2011/1/7)
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  1. 2011/01/07(金) 10:51:33|
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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