太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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いじめの芽

 先日、「いじめをなくすにはどうすればよいか」という質問を受けた。学校や職場だけでなく、小は家庭から大は国全体にまで発生している問題だけに、真剣に対策を考えなければならない。

 私は、いじめが起きる最大の原因は「閉鎖社会」にあると考えている。
 第一に、閉ざされた集団のなかでは、悪口、誹謗、中傷が周囲に伝わると、大多数に共有されてしまう。クラスでも職場でも、みんながそれを知っているとなると、いじめられた人は居場所がなくなる。
 第二に、閉鎖的な集団ではメンバーが長期間固定されるため、そこには非公式集団のリーダーが生まれ、それを中心に序列が形成される。すると、リーダーに従わない者や序列を乱す者はいじめられる。

 集団が外部に開かれていたら、それは防げる。
 たとえば小中学校でのいじめは深刻だが、高校、大学にいくと急速に減る。高校に入ると生徒の関心はクラスや学校の内側より、受験など外部に向く。学校のほか、予備校に通う者も増えてくる。そうなると、たとえ誹謗・中傷が発信されても、相手や周囲の者がそれに関心を抱かない。また、個々人が複数の集団に対して多元的に帰属するようになれば、誹謗・中傷も限定された範囲にしか共有されない。しかも義務教育ではないので、いじめに耐えられなければ辞めるという最終手段も残されている。大学に行けばクラスそのものがなく、固定的な集団が形成されないので、いっそういじめは起きにくい。
 ところが大学院に進学すると、そこでは再び閉鎖集団になる。「研究室」でのいじめやパワハラがしばしば報じられるのはそのためだ。

 したがって、いじめを防ぐには、集団・社会を開かれたものにしなければならない。学校ではクラス替えをもっと頻繁に行い、転校や生徒の交流も進めたほうがいい。部活ももっとオープンでだれでも参加できるようにし、複数の部への掛け持ちも奨励する。職場では正社員以外に派遣や臨時、アルバイトを増やすなど「ダイバーシティ」化を推進する。境界が不明なネットワーク型組織を取り入れるのもよい。家庭でも夫や妻、子の関心を外に向けさせれば、DVもなくなるだろう。

 このように考えたら、「クラスの団結」「チーム一丸」「社員の一体化」「日本は一つ」といったキャッチフレーズの背後に、実は危険な「いじめの芽」が潜んでいることがわかる。団結や一体化には良い面ばかりではなく、危険な面もあることを多くの人に認識してもらいたい。

(2011/6/20)
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  1. 2011/06/20(月) 09:39:24|
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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