太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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功績の継承を許さない選挙というシステム

 私は企業でも役所でも、興味深い制度を取り入れているところがあればどこへでも飛んでいって取材する。自分でいうのもなんだが、フットワークは軽いほうだ。
 ところが最近、それがなかなかうまくいかない。とくに役所が問題だ。情報を得て、いざ訪ねてみようと思い、依頼の電話をすると決まったように「その制度、今はもうありません」という答えが返ってくる。それも一度や二度ではなく、ことごとくである。何か不都合があったのかと訊いても、とくに納得できるような理由は聞かれない。皮肉なもので、ユニークな制度や注目を集めた制度ほど消滅するのも早いようだ。

 原因ははっきりしている。選挙というシステムが既存の制度を葬り去るのである。新しく当選した首長にとって、前首長の「遺産」など何の価値もない。それどころか、とても目障りなものなのだろう。しかもユニークで世間から注目される制度ほど、自分にとっては邪魔である。早く前首長の色を消して、自分の色を出したい。しかも、それができる立場にある以上、そうするのは当たり前かもしれない。
 生物学的にとらえるなら、動物のオスがメスと一緒になるとき、前のオスがつくった子を殺してしまうのと通じるものがあるかもしれない。とにかく前の遺伝子を消し去り、自分の遺伝子を残そうとするのである。
 しかし、いずれにしてもそのような行動は住民の利益とは無関係だ。いや、制度改革が政治的パフォーマンスの道具に使われたら住民にとって迷惑このうえない。

 もっとも、素朴な民主主義を信奉する人のなかには、長期的な視点からそれを容認する人がいるかもしれない。動物が自然淘汰で進化してきたように、民主主義もそうやって進化するのだと。
 はたして、そうだろうか? 私は楽観的にはなれない。
 第1に、4年に一度という選挙制度が適応を妨げる。たとえ制度「改悪」が少々住民の反発を招いても、4年たったら忘れられる。4年後の選挙には、前首長の実績を引き継いだことより、自分で制度をつくったという実績のほうがプラスになる、というくらいの計算はしているはずだ。
 第2に、民主主義の根幹にかかわる問題だが、選挙で選ばれた人=適者かという問題である。たしかに動物の闘いなら勝者=適者といえるだろう。同じように民間企業なら、株価や利益といった比較的客観性の高い基準がある。だから民間企業なら、新しい経営者は前経営者のつくった制度でも良い制度は残しておいたほうがトクだ。したがって優れた制度は生き残る可能性が高い。それに対し、行政の場合には残念ながら有権者の判断に役立つ客観的な基準がない。しかも、専門的で複雑な制度になるほど一般の有権者には評価が難しくなる。よく言われるように、民主主義は国民(住民)のレベル以上には発展しないのである。

 必要な対策ははっきりしている。有権者が正しく判断できるように、第三者が制度を評価してわかりやすく示すしかない。たとえば、選挙前に第三者機関が立候補予定者に対して「○○制度は80点と評価されています。この制度を残すのですか、変えるのですか? 変えるならどんな制度を取り入れるつもりですか?」といようにな公開質問をしてはどうだろう。
 民主主義の弱点を補う工夫をしない限り、賽の河原の石積みは永遠に続く。
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  1. 2013/08/26(月) 09:18:52|
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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