太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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過剰適応に苦しむ日本企業

 40度に迫るほどの猛暑が続いたこの夏、うちの飼い猫(オス、2歳)の元気がない。冷房の効いた部屋に居座るか、ヒンヤリとした板の間に体をくっつけて動かない。ネコの祖先は中東産で暑さに強いと聞いていただけに、ちょっと意外な気がした。詳しい人に聞いてみると、うちのネコのような長毛種(といっても雑種だが)は寒い土地で飼うように改良されてきたため、暑さには弱いそうだ。とりわけ温暖化による近年の猛暑は、「想定外」だったのだろう。
 動物のなかでも家畜は人間の都合によって品種改良させられている。飼料の無駄を省くため、羽やトサカのないニワトリが生産されているの見たときは衝撃を受けた。
 けれども、それは動物の世界だけではない。人間だって、わが子にオリンピックで金メダルを獲らせたければ、それなりの血筋の人と結婚して子供ができたら幼児期からスポーツの英才教育を受けさせるのが合理的だし、有名大学に入れたければ入試に的を絞って受験秀才を育てるのが近道である。実際、世間では家畜の世界に近いようなことも行われている。
 このように焦点を絞って、そこに資源を投入すると具体的な目的達成には合理的だ。そして競争が激しくなればなるほど、そのような戦略をとらないと勝ち抜けなくなる。ところが、うちのネコのように環境が変わったらお手上げだ(うちのネコも土間で仰向けになり両手を突き出した「お手上げ」ポーズで寝ている 笑)。いわゆる「高学歴プア」も、ある意味では環境変化の犠牲者なのだろう。
 いまこそ私たちは、「適応が適応を妨げる」という言葉をもう一度よく噛みしめるべきである。
 とくにそれを強く感じるのは、日本企業のマネジメントについてである。周知のように日本企業は長く繁栄した工業社会のリーダーであり、模範生だった。品質管理やコスト削減、人材育成などあらゆる面で工業社会における競争力を高めるように特化し、それが大成功を収めたのだ。
 ところがIT化、ソフト化、グローバル化の波が押し寄せ、ポスト工業社会へ移行しつつあるいま、日本企業は成功体験の重さに苦しんでいる。工業社会仕様のモデルが人々の価値観や考え方、文化や道徳にまで深く、広く浸透しているため、変えようと思っても変えられない。変革の方法もまた典型的な工業社会仕様なのだ。その結果、成功体験の縛りがない途上国にもなかなか太刀打ちできないのが現状である。
 成功体験のなかから何を残し、何を捨てるか。どれだけ思いきって新しい絵を描くか。組織と人事の面については、拙著 『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社、本日刊)で事例やエピソードを交えながら述べた。第2弾、第3弾も用意している。

(2015/9/18)
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  1. 2015/09/18(金) 10:18:31|
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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