太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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厳罰とポピュリズム

 飲酒運転をした地方公務員に対する懲戒免職の処分が「過酷すぎる」という理由で、取り消しを命じる判決が相次いでいる。
 飲酒運転の取り締まり強化と厳罰化には私も賛成である。しかし「公務員なら理由の如何を問わずただちに懲戒免職」というのは、やはり「厳しすぎる」と思う。
 第一に、懲戒免職だとクビになるだけでなく退職金も取り上げられるが、退職金は給料の後払い的な性質を持つ。したがって、よほど悪質な罪を犯さない限り、それを受け取る権利を奪うことはできないはずだ。その「悪質」さを判断する基準は、社会通念や公平性である。自営業や自由業なら、かりに飲酒運転で検挙されても当然ながら職を奪われることはないし、企業でも懲戒免職といった重い処分を科すところは少ない。だとしたら、公務員だけを懲戒免職にするのはバランスを失するといわざるをえない。
 第二に、当たり前のことだが、公務員だけを厳しく処分しても問題の解決にはならない。公務員への厳罰が、社会全体に波及するとも思えない。
 そして、私が反対する一番の理由は、厳罰化の背景にポピュリズムの臭いを強く感じるからである。「公務員は市民の模範になるべきであり、それが飲酒運転をするとは言語道断で厳罰は当然だ」という主張は、確かに一般受けする。しかし、「財政が厳しいときに公務員の給与カットは当然」というのと同じで、冷静に考えてみれば論理に無理がある。警察官や交通安全課の職員ならともかく、職員一般に「模範たるべき・・・」というのはどうか。受け取り方によっては、「公務員のほうが人格的に高潔である」という官尊民卑の思想だといえなくもない。
 いずれにしても、安易なポピュリズムに与することなく、本当の正義を守るのが裁判所の役目であり、その点で一連の判決を支持したい。
 いうまでもなく、飲酒運転の撲滅は国民全体で取り組むべき課題なのである。

(2009/7/19)
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  1. 2009/07/19(日) 11:56:05|
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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