太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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自己実現について

 最近は不況やリストラでのんきなことを言っておられなくなったせいか、一時ほど「自己実現」という言葉を耳にしなくなった。しかし、経済的な豊かさを望めない今だからこそ自己実現が大切だという人もいるし、経営者が賃上げ抑制の口実に自己実現を強調することもある。いずれにしろ、自己実現とは何かをもう一度考えてみることも大切だろう。
 かつて私が聴いた話のなかで印象に残っているものに、河合隼雄氏の「道草と自己実現」と題した講演がある。『道草』は夏目漱石の有名な小説だが、そのなかで主人公は、身のまわりの煩わしい出来事に振り回された末に、人生とはこんなものかと悟っていく。河合氏が言いたかったのは、自己実現とは結果ではなく、何かを求めて努力したり克服したりしていくプロセスだということである。
 私の場合、本の原稿を書いているときは、早く脱稿してあれをしたい、これもしたいと考える。ところが書き終えて出版社に原稿を渡してしまうと、急に言いようのない空虚感に襲われる。そして、執筆中は感じなかった小さな不満や不安が、まるでこのときを待っていたかのようにつぎつぎとつきまとってくる。こうした経験を重ねるうちに、つぎの原稿、さらにそのつぎの原稿も執筆の予定が決まっていないと落ち着かなくなる。
 ここまでくるとやや病的だが、だれでも受験やスポーツ、子育てなどでも同じような体験があるのではなかろうか。結局人間は一生何かを求めて走り続けるようにできているのだ、それが自己実現だ、とわかったようなことを言いたくなる。
 (2003)
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  1. 2002/11/30(土) 12:35:57|
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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