太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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「片手間」はよくないのか?

 書店のレジに高校生くらいの若者がやってきて、漫画本をポンと放った。なぜ、もっとていねいに差し出せないのか?
 彼らはズボンを腰までずらし、バイクに乗るときもヘルメットを後ろに吊している。若者独特のテレと見るべきだろう。
 ではなぜテレるのか? おそらくまじめにやっていると自分の内面を覗かれるようで怖いのである。素の自分を見られることに対するこの年代特有の恐怖心だ。だからわざと、「心ここにあらず」を装う。

 先月出版された拙著『「見せかけの勤勉」の正体』にはかなりの反響があった。大部分は「納得できる」というものだが、なかには異論もある。そのほとんどは「管理は片手間で」に集中している。私もそれは予想していた。
 これは私の想像だが、「片手間」というと上に書いた若者の一見ぞんざいな態度のようなものを思い浮かべるのだろう。しかしほんとうに「片手間」だったり、「心ここにあらず」だったらあのような態度をとるだろうか? ズボンのベルトはウエストで締めたほうが歩きやすいし、ヘルメットはまともにかぶるほうが楽だ。若者があのような態度をとるのは、逆に周りの目を過度に意識している証拠である。それを意識していないように見せたいからそうするのだ。
 それは大人だって同じだ。家庭でも組織のなかでも、乱暴な態度をとったりトラブルを引きおこしたりする人は、たいていが入れ込みすぎている。そこが一番大事だと思っているから譲れないし、相手に過剰な期待をかけ、余分な干渉をしてしまう。ときには妄想もわく。
 その点、ほかにもっと大事な心のよりどころがある人は、過剰な期待も余分な干渉もしない。トラブルに巻き込まれたくないので身を慎み、丁重な態度をとる。そして相手から尊敬される。周りから「あの人は大人だ」といわれるのは、たいていが生きがいをそこに持ちこんでいない人だ。

 もちろんそれも程度ものだが、「熱意」や「誠意」ばかりが求められ、お節介が過剰気味なのが今の日本。「片手間」の効用にもっと注目してもよいのでは。

(2010/7/3)
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  1. 2010/07/03(土) 10:57:27|
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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