太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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動態的に考える

 先月開催された組織学会の大会で、ゲストとして講演した株式会社ミスミ社長の三枝匡さんが最後につぎのような話をされた。
 自分が社長に就任するまでのミスミは、あまりにも自由すぎた。その弊害が表面化したので少し管理するようにした。しかし管理しすぎるとこんどは社員の自主性や活力がそがれる。そうなるとこんどは管理をゆるめる。その繰り返しだと。

 どのような組織が理想的か? 
 組織論の専門家でなくても、人をまとめる立場の人はそれを考え、理想を追求してきたはずだ。組織は統制と規律が何より大切だという人もいれば、組織は仕事をするためのインフラ(場)であってメンバーの自律を最大限に尊重すればよいという人もいる。統制と自律のバランスが大切だという常識派(中庸主義者)も多い。ところが、どのモデルをとるにしても、いずれ壁にぶつかることが多く、その段階で、自分の理想や信念は瓦解してしまう。

 しかし、動態モデルを取り入れれば、もう少し柔軟に考えることができ、理想や信念は結果的に生き残る。たとえばメンバーの自律を最大限に尊重すべきだが、人間は期間がたつとだれでも自分の方向性を見失ったり、組織や他のメンバーからの要請を忘れたりする。そこでしばらく規律や管理を経験させる。そしてまた元に戻す、といった具合にするのだ。

 これは組織にかぎった話ではない。
 たとえば子育てでも、子どもは自由に伸び伸び育てればよいと考えている人もいるし、厳しくしつけなければならないと信じている人もいる。しかし、そのように単純な信念を通して立派な大人に育てあげたという人はまれではなかろうか。自由にさせすぎて道を踏み外した、事故に遭ったとか、逆に厳しくしすぎて自主性のない人間になった、反抗期が遅れてやってきた、というのがむしろ普通だ。
 動態モデルなら、自由に育てて、その弊害が現れそうになったときに厳しくしつける。そしてまた自由にしつけるといった繰り返しになるだろう。

 大事なのは、一つの理念や方針が絶対的に通用すると信じ込まないことである。そんなものがあれば長い歴史の中でだれかが見つけていて、組織づくりでも子育てでも悩む人はいなくなっているはずだ。まじめな人はとくに絶対的な真理を追究しようとする。それはそれで大切なことだが、そのためには柔軟性を取り込む別の要素も加えなければならない。

(2010/11/2)
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  1. 2010/11/02(火) 09:24:04|
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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