太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

見えない能力

 昨日会った学生ラグビーの経験者が、「最近の選手は見かけはとても立派になったが、すぐに怪我をする」と語っていた。それを聞いて私は、やっぱりそうかと思った。
 
 私は今月から、メタボ対策のために生まれてはじめてジムへ通うことにした。そこには一目でスポーツマンとわかる筋骨隆々とした人たちが何人もいて、バーベルやトレーニング機器で懸命に筋力を鍛えている。たしかにそれによって大きな筋肉は付くし、見てくれはたくましくなる。けれどもスポーツに必要な細かい筋肉は付きにくい。また当然ながら骨や腱は、筋肉に比例して丈夫になるわけではない。そのアンバランスが自らの体をこわす場合もあるだろう。敏捷性や判断力、すばやい身のこなしなどを含め、スポーツに必要な能力はやはり実践で身につけるのが基本だ。

 ところで昨日、OECDが世界の15歳の生徒を対象にした学習到達度調査の結果を発表した。それによると、日本人生徒の低落傾向にやっと歯止めがかかったそうだ。教育関係者は一安心といったところだが、はたしてそれに一喜一憂している場合なのか。調査で試された能力は読解力、数学的リテラシーなど「見える能力」が中心だ。それらが大切でないとは言わないが、仕事においても生活においてももっと重要なのは独創性、創造性、勘やひらめき、洞察力、相手の気持ちや考えを読む力、といった「見えない能力」である。

 スポーツにしても仕事にしても、最も重要な「見えない能力」は、見えないし、つかみどころがないだけに体系的に育成したり、それを評価・測定したりすることがきわめて難しい。実戦で身につけ、結果を通して事後的に評価するしかないだろう。しかも、その実戦のなかには、いたずらやいじめ、けんかやトラブル、だまし、といった社会的に容認されないものまで含まれていることも事実として認めるべきである。それを考えたら、教育機関など公式な組織でそれを育成することはできない。

 結局、社会の許容度や文化といったシステム全体を再構築していかなければ「見えない能力」は育たないし、そうしないことには日本人、日本企業の国際競争力も改善しないのではなかろうか。

(2010/12/8 誕生日に)
スポンサーサイト
  1. 2010/12/08(水) 12:00:21|
  2. 過去
  3. | トラックバック:0

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://ohtahajime.blog50.fc2.com/tb.php/137-a1cb08a6
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

最近の記事

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

リンク

このブログをリンクに追加する

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。