太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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ITは、日本型閉鎖システムを変えるか

 入試問題の投稿によって、各大学は受験体制の再チェックが迫られている。大学側をおそらく、携帯電話の持ち込み禁止や電波妨害といった防衛策を取らなければならなくなるだろう。
 
 しかし私は、この事件の背後にはもっと大きな問題が横たわっており、そこにメスを入れなければいつまでたってもイタチごっこが続くのではないかと危惧している。たとえば将来、メガネ、鉛筆、衣類などに辞書機能がつくとか、手の動きを読み取って自動計算し勝手に手を動かすような機械が体に付着されるかもしれない。しかも、それが大量生産されず個別にオーダーメイドされるようになったら大学側は手の打ちようがない。

 では、背後にある「大きな問題」とは何か?
 それは特定の組織や人が個々人を評価し、選別するというところにある。そうした閉鎖的システムは市場や社会といったシステムから切り離され、自己目的的に独り歩きしている(評価や選別をもっと厳格にすべきだという最近の論調はその最たるものである)。そこが問題なのだ。なお詳しくは拙著『選別主義を超えて』(中公新書,2003年)を参照されたい。

 入試問題の流出と必ずしも同列に扱うことはできないが、大相撲の八百長や検察による証拠改竄も携帯メールやフロッピーという情報機器によって動かぬ証拠を突きつけられ、これまで闇に葬られてきたかもしれない問題を表にさらけ出した。大相撲にしても検察にしても、あのような不正を生む動機が働きかねず、しかもそれにブレーキがかからないようなシステムになっている。そこにメスを入れず、モラルや矜持にだけ期待するのはあまりにもナイーブだ。大相撲はともかく、検察の場合は国民の人権が根本から脅かされるだけにたまったものではない。

 ITによってあぶり出された問題の本質は、閉ざされたシステムの限界である。ITは人為的に閉ざされたシステムの壁を容赦なく突破する。おそらく同様の事件は、これからもさまざまな分野でつぎつぎと起こるだろう。これまでのような小手先の改革や弥縫策では糊塗しきれなくなってきたのである。

(2011/3/1)
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  1. 2011/03/01(火) 09:23:12|
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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