太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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公務員改革と嫉妬心

 市長選挙にA、B二人の候補が立候補したとしよう。A候補は「市民の所得は上げられないが、職員の給与を5%カットする」、B候補は「市民の所得を5%上げる代わりに、職員の給与は2倍に上げる」とそれぞれ公約に掲げた。
 どちらが当選するだろうか?
 住民の生活が極端に苦しければともかく、普通だったらA候補が当選するのではないか。
 合理的に考えれば、B候補の公約のように市民生活をよくしてもらった方がよいに決まっている。しかし、多くの市民にとっては職員の給与が2倍になり、贅沢な生活をするのを見せつけられるくらいなら、自分の生活が多少苦しいのをがまんするほうがマシなのだ。とくに市町村のような基礎自治体だと、近隣、親戚、同級生など身近なところに職員がいる。だから嫉妬心を抑えることは難しい。
 「貧しきを憂えずして、均しからざるを憂える」というが、これは公務員改革においてもやっかいな問題だ。職員に能率を上げてもらうためには待遇をよくしなければならないが、待遇をよくすると住民(国民)が反発するというジレンマがあるからだ。その段階で、合理的な議論は行き詰まる。結局、仕事の能率やサービスの低下には目をつぶっても、住民の嫉妬を解消するため、「給与の2割カット」といった非合理な選択をしなければならなくなる。
 表面化しにくいだけで、公務員改革にかぎらず、人間の嫉妬心が改革や施策の障害になっているケースが実は多い。嫉妬に対していかに対処するか。「嫉妬学」といった研究があってもよさそうだ。

(2011/6/16)
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  1. 2011/06/16(木) 14:09:02|
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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