太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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「学業第一」 特待生は悪か?

 夏の高校野球選手権の全出場校が昨日決まった。それと連動して今日の日本経済新聞では、高校野球の特待生問題が取りあげられていた。
 特待生については、それを肯定する声より、批判的な声のほうが大きい。たしかに、いろいろな問題があることは事実だ。しかし私は、特待生をなくすべきだという声が大きいことのほうに不安を覚える。

 特待生を否定する人たちは「学業第一」を錦の御旗として掲げる。たしかに高等学校は学業のためにつくられたのであって、プロスポーツ選手を育てるためにつくられたのではない。しかしスポーツ少年の中には、勉強は苦手だがスポーツなら負けないという子や、スポーツで身を立てたいと思っている子もたくさんいるはずだ。もちろんスポーツに限らず、芸術や各種技能でも同じである。
 そういう子たちに能力を伸ばす機会をぞんぶんに与えてもいいではないか。こう言うと、「それなら学校以外の場で伸ばせばいい」という反論が返ってきそうだ。しかし、わが国のどこにそのような場があるのか?プロ野球選手やJリーグの選手に、高校以外で才能を伸ばした者がどれだけいるか?

 ところで公立の小学校や中学校では、水泳が得意な子、足の速い子、一輪車に上手に乗る子、セミ採りが得意な子は教師や同級生から拍手が送られ、クラスの人気者になる。しかし勉強ができる子、有名私学に合格した子には教師も同級生も冷たい。それは、勉強ができる、有名私学に入ることのほうが重要だとみんなわかっているからである。
 さらにその先には、より偏差値の高い大学に入り、一流企業に入社、そしてより高い管理職へ「出世」していくという王道がある。「そんな出世主義者は昔のことで、いまは少ない」と言われるかもしれない。しかし、たとえそうであっても、それは目指す人が減っただけで、このような一元的価値観に基づく序列意識は崩れていない。だから伝統的な大企業のエリートや官僚に対する風当たりも強いのだ。風当たりの強さは、ねたみやルサンチマンの強さの裏返しだ。

 私はこの一元的な序列社会がわが国の最大の弱点だと思っている。「出る杭を打つ」風土も、足の引っぱり合いもそこからきている(ちなみに私はそれを「裏承認社会」と呼んでいる)。政治、経済、学術などで日本の地位、存在感が低下し続けているのも、このような序列社会が新しい環境に適応できなくなっているからだろう。

 このように考えたら、「学業第一」というタテマエにこだわるより、多少の不都合はあっても個人個人が得意な分野で才能をどんどん伸ばし活躍できるようにサポートしたほうがよい。そうすると、いろいろなところで既存の体系や秩序が維持できなくなるかもしれない。しかし、その乱雑さの中でこそほんとうに個人が生かされ、組織も社会も活力を取り戻してくるに違いない。体系や秩序を優先するのは本末転倒だろう。
 
(2011/8/2)
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  1. 2011/08/02(火) 09:33:51|
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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