太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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「いつでも、どこでも」つながる社会は幸せか?

 今朝、大学へ向かう途中、自転車に乗っていたら女性が突然、道路の真ん中にはみ出してきて危うくぶつかりそうになった。ふり返ってみたら、予想どおりイヤホンをしてスマートフォンをいじっている。もはや、こんな経験は日常茶飯事だ。
 これだけ夢中になるくらいだから、人とつながり、コミュニケーションをとるのはとても楽しいのだろう。

 I T はどんどん進化し、やがて世界中のだれとでもいつでも好きなときに顔を見ながらコミュニケーションがとれるようになるに違いない。いや、もう片足をそこに踏み入れているといってもいい。
 もっとも、時代の先端を行き続ける人がいる一方で、それにまったく関心のない人や、時代の波に翻弄されるのを恐れる人がいる。後者は、「情報やコミュニケーションに振り回されたくない」という。

 はたして、「いつでも、どこでも」つながる社会は幸せなのだろうか?
 それを歓迎する人たちは、かたくなに拒否する人たちに対して、「抵抗感やストレスは単に習慣の問題だ」とか、「孤独になりたいときには通信を切断すればよい」と説得するだろう。

 しかし、そう単純なものでもなさそうだ。
 この問題は、習慣的な問題と本質的な問題とを分けて考える必要がある。

 たしかに私たちは、新しい環境に慣れたら、それに合った生活様式や思考・行動様式を身につけ、行き交う情報とコミュニケーションのなかで生活し、仕事をすることができるようになるかもしれない。
 ただ、今でも気が進まないのに人と会ったり話したりしなければならないことは多い。連絡を断ったらすむものばかりではない。気遣い、間合い、機微はなかなか難しい。「いつでも、どこでも」の世界では、いっそうそれに悩まされるに違いない。
 
 本質的な問題の一つは、だれにとっても<時間が一日に24時間しかない>という事実である。コミュニケーションは、ある種の思考や行動を必ず阻害する。したがってコミュニケーションが多すぎると、それだけ深い思考や快い反芻、感慨、自由な行動ができなくなるわけだ。
 もう一つの本質的な問題は、それとも関連するが、技術的・倫理的な制約から、<脳をつなぐことができない>というところにある。自分の脳と他人の脳とをつなげない以上、感情を共有するにしても一緒に考えるにしても自ずと限界がある。ある程度以上「便利」になっても、それは効用がないばかりか負の効用になる。

 だからこそ「個人」(individual)なのである。
 幸か不幸か、「いつでも、どこでも」コミュニケートできる社会へ向かって一直線に進んでいくというわけではなさそうだ。
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  1. 2011/10/05(水) 13:14:31|
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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