太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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公務員の"やる気"を左右するもの

 『公務員革命』に書けなかったエピソードを一つ紹介しよう。

 東京近郊の市に住むYさんが、こんな話を聞かせてくれた。

 Yさんのお母さんが市役所の窓口を訪れたときのことである。そこにいた職員に手続きのしかたを尋ねたところ、黙ったまま身振り手振りで教えてくれた。お母さんはてっきり、その職員は言葉が不自由なのだと思い、障害者を雇用している役所に感心したそうだ。ところが、用事が済んでたまたまその職員に目をやると、彼は仲間とふつうに会話しているではないか。お母さんがそれを見てあきれたのは言うまでもない。

 その話を母親から聞かされたYさんは、市の職員に対して良いイメージをもっていなかった。
 ところが、しばらくたってそのイメージを一変させる出来事が起きた。
 Yさんは自宅でぎっくり腰に襲われ、一歩も歩けなくなった。やむなく救急車の世話になることになった。すると、やってきた救急隊のスタッフたちはYさんの容態に気をつかいながら、とても迅速に救護してくれた。至れり尽くせりの行き届いた処置だったという。
 Yさんは、その仕事ぶりに感激すると同時に、これが同じ市の職員なのかと信じられない気持ちになったという。

 同じ公務員でも、やる気のある職員とそうでない職員はそれほど違うのか。そう受け止める人が多いだろう。
 しかし、かりに押し黙ったまま応対した窓口の職員と、水際だった処置をした救急隊員の立場が入れ替わったら、果たして今と同じ仕事ぶりをみせるだろうか? 持ち場が替わって長年その仕事を続けたら、態度が入れ替わってしまうかもしれない。
 救急隊員は仕事に使命感をもつことができ、常に市民から感謝される。だからますますモチベーションは高まる。いっぽう窓口の職員は、仕事が単調なうえ、市民からは良い仕事をして感謝されるより、手際の悪さに不満を漏らされることのほうが多いのではないか。つまり救急隊員は「表の承認」を得る機会が多いのに対し、窓口の職員は「裏の承認」が中心である。

 両者の対照的な働きぶりをみると、公務員の"やる気"のあるなしは、必ずしも本人の資質によるものではないし、成果主義によるものでもないことがわかる。そして、今後の公務員改革もおのずとその方向性がみえてくる。

(2011/11/3)
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  1. 2011/11/03(木) 15:35:13|
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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