太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

「成果主義」と競争

 「あなたは成果主義に反対だというが、競争をなくしたら悪平等におちいるではないか」と批判されることがある。
 誤解しないでほしい。私は「成果主義」には反対だが、競争には反対していない。

 それは、「成果主義」イコール競争原理ではないからである。
 私の立場は、いわゆる個人主義、すなわち究極の価値は個人の利益、幸せにあると考える。ただ個人主義といっても孤立した個人を理想とするわけではない。人間には仲間同士の交流や共感を求める欲求があるし、個人を守り、生かすために連帯も必要とする。ただ、個と全体とが対立したとき、できるかぎり個の方を優先するというスタンスをとる。

 個を尊重するために強力な全体が必要だというホッブスのような考え方もある。しかし、全体と個は緊密にリンクしているわけではない。たとえていうと、ワイヤーではなく弛んだチェーンのような関係にあると考えている。「公共の福祉」による制約なども、無制限に認めるべきではないと思う。

 厄介なことに、人間には他人より秀でたいとか、競争に勝ちたいといった欲望、あるいは本能のようなものがある。社会主義が失敗したのは、それを軽視したためだろう。したがって社会の中ではもちろん、生活の糧を得る場であると同時に生きがいの場である組織のなかにおいても、競争をなくすことはできない。競争はまた、それが組織や社会の活力にもつながる。だから私は競争を否定しない。
 もっとも、弱肉強食の競争は組織や社会を破壊するのみならず、個人の利益も脅かす。したがって実質的な機会均等が保証されなければならないし、富の再分配やセーフティネットも必要だ。

 では、なぜ「成果主義」に賛成できないのか?
 それは、「成果主義」が組織の論理に基づいているからである。世にいう「成果主義」は、組織という閉ざされたシステムのなかで地位、金銭、名誉を奪いあう、「ゼロサム」原理に支配されている。しかも、その配分は上司の評価にもとづいて行われる。したがって、そのプロセスは全体主義的である。

 だから私は、競争は肯定するが「成果主義」には賛成できないのである。
 「成果主義」ではない競争。それは一種の市場メカニズムである。ただ、必ずしも金銭を媒介にしない。たとえば市場や顧客、住民の中に入っていって活躍し、承認や名誉を獲得するのがそれである。承認や名誉が報酬に反映されるようにすれば、かぎ括弧を外したほんとうの意味での成果主義になる。それなら私も賛成する。

(2011/12/7)
スポンサーサイト
  1. 2011/12/07(水) 22:14:30|
  2. 過去
  3. | トラックバック:0

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://ohtahajime.blog50.fc2.com/tb.php/154-49ffd064
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

最近の記事

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

リンク

このブログをリンクに追加する

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。