太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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「絆」が「くびき」に変わるとき

 今年の漢字は、大方の予想どおり「絆」だった。
 国民の間で自然に支持されたというより、マスコミ主導で崇められるようになった漢字というようにも思えるが。

 いずれにしても、老若男女関係なく手を差しのべ、支え合う被災地の人々や、離れていても被災者のために何か力になりたいという思いを寄せる人たちの優しさと行動力には心を打たれる。そこには純粋な「絆」の存在を感じ、胸が熱くなる。そして、日本人であることを誇りに思う。

 しかし一方で、「絆」が叫ばれるようになるとともに、そこに危険な臭いを感じとった人も多いのではなかろうか。その象徴が、同時に流行した「自粛」「謹慎」という言葉だ。震災後は、卒業式、送別会、花見、入学式など諸行事の「自粛」が相次いだ。ちょっとハメを外したり、ぜいたくをしたりすると、「不謹慎」だと非難された。
 とくにインターネット上のバッシングなどをみていると、パーマネントをかけただけで「非国民」呼ばわりされた戦時中と何も変わっていないのではないかという印象をもった。隣近所に張りめぐらされた監視の目がネット上に移っただけである。

 社会は個人の自律と連帯との微妙なバランスの上に成り立っている。ただ西洋と比較すると日本社会はもともと連帯の方にかなり軸が傾いているし、傾くのを押し止める装置がない。そのため、連帯は容易に束縛へと移行する。
 「自粛」にしても「謹慎」にしても、本来は自分の意思で行うものだ。ところが日本では、他人にそれを押しつけようとする。「自粛」ではなく「他粛」だ。あるいは組織や団体のトップが、その立場上「自粛」や「謹慎」を口にすると、他のメンバーはそれに従わざるをえなくなる。

 そして、そもそも被災者、被災地を慮ったはずの「自粛」や「謹慎」が、ほんとうに被災者、被災地のためになっているかどうか、はなはだ疑問だ。その原点を離れて束縛し合い、たたき合う現象が起きるところに日本社会の病根がある。

 せっかく「絆」という言葉が膾炙されたのだから、その言葉をとおして日本社会の光と影をもう一度みつめ直してもよいのではなかろうか。
 
(2011/12/14)
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  1. 2011/12/14(水) 09:14:04|
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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