太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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虚栄心、自己顕示欲は衰えず

 ビジネスマンや官僚として社会的地位を築いた人のなかには、エッセイや講演で故事、歴史、文化などの教養をひけらかす人がいる。わざと難解なことばを使う人もいる。こちらとしては色眼鏡で見てはいないつもりだが、どこか違和感がある。原因は、エッセイや講演のテーマを語るうえで必要のない話や言葉だからである。必要があってそうした知識が自然にでてくるのか、それを使うことが自己目的化しているのかが、プロフェッショナルとディレッタントとの違いだ。
 必要のない話や語句をとってつけるだけならまだしも、教養をひけらかすためにわざわざ主張の内容までゆがめてしまうこともある。そうなったら、もう滑稽ではすまない。

 なぜ、それほど「教養」をひけらかしたいのか?
 それはおそらく文化人、知識人へのあこがれである。すでに獲得している専門的な知識や能力への評価だけでは満足できず、文化人、知識人という、より人格的な性格の強い評価を得たいからだろう。
 しかし上記のように、木に竹を接いだような話になっては、かえって人間の底の浅さを露呈してしまう。
 
 ところで、日本経済新聞に「交遊抄」という欄があるのをご存じだろうか?
 各界で活躍し、それなりの地位を得ている人が友人、知人との交友関係を自ら紹介するコーナーだ。読んでいると、特定の型にはまった記述がとても多いことに気がつく。
 たとえば、こんなふうだ。

 「私には気のおけない二人の親友がいる。一人は○○君、もう一人は△△君で、ともに東大の□□ゼミで学んだ。○○君は絵に描いたような秀才で、学部を首席で卒業し、××省に入った。いっぽう△△君はリーダーシップに優れ、・・部のキャプテンとしてチームを対抗戦の優勝に導いた。彼らと対照的にずぼらな私は、大学へはめったに顔を出さずアルバイトや映画館通いに精を出していた。あれから三十年たった今、○○君は××省の局長、△△君は国会議員として、それぞれの才能をいかんなく発揮しながら難局に立ち向かっている。落ちこぼれだった私も幸運に恵まれ、なんとか経営者としての役目を果たしている。お互いに多忙で卒業以来、二、三度しか会っていないが、いずれ時間に余裕ができたら一緒にワイングラスでも傾けながら人生を語りたいものだ。」

 ほんとうにこの二人が親友かどうかわからない。また、社会に出てから親しい友人ができなかったことを白状しているようなものだ。めったに会わないのに何が「交遊抄」かというケチもつけられよう。しかし、そんなことは本人にとってどうでもよいのだ。自分が東大に行っていたこと、勉強しなくても元々優秀なので今の地位に就いていること、「偉い」友人がいることをわかってもらえさえすればよいのである。
 「交遊抄」という欄は、人間の性(さが)をあぶり出してくれる貴重なコーナーだ。

 功成り名を遂げても、人間の虚栄心や自己顕示欲は衰えないものである。ずっと昔に、「かぎりないもの、それが欲望-」という歌があったが、虚栄心や自己顕示欲にもそれはもろに当てはまる。人間らしくてよいという見方もできようが、社会的地位や影響力のある人のことだけに、手段が目的化して主張をゆがめるようではちょっと不安になる。

(2012/1/24)
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  1. 2012/01/24(火) 22:53:43|
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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