太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

管理職試験、「受験率10%」の衝撃

 市役所や県庁など多くの自治体では管理職登用試験を取り入れているが、その受験率が驚くほど低い。有資格者のうち受験する人は係長試験で10%、課長試験でも20%程度だという。

 組織を動かす決定権を握っているのは管理職であり、やや大げさに言えば住民の生活や自治体の命運は彼らの意欲と能力にかかっている。したがって、職員のなかでもとくに優秀な人が管理職に就いてもらわなければ困る。ところが実際には、能力の有無はともかく「なりたい」という1割か2割の人のなかからしか管理職が選べないわけだから、考えてみればとても深刻な事態だといえよう。

 管理職になりたくない人が増えたのは、とくに近年の傾向である。昔は「管理職になりたくない」というと好奇の目で見られたものだが、最近はむしろなりたいという人のほうが珍しがられるくらいだ。背景にあるのは、管理職の魅力の低下、すなわち試験を突破して管理職になっても「割に合わない」という損得勘定である。

 管理職手当やさまざまな「役得」の廃止などもその一因だが、聞き取りをしてみると世間のパッシングや責任追及が厳しくなったことが大きな原因であることがわかる。
 そして、これは地方公務員にかぎったことではない。いわゆるキャリア官僚の人気が低下しているし、企業でも出世志向が薄れているといわれる。役所でも会社でも事件や事故、不祥事が起きればマスコミは「弱者の味方」を印象づけるため、このときとばかりにトップを糾弾するし、市民団体も「国民感情」「市民目線」をタテに追及をやめない。うっかりしていたら検察審査会によって強制的に起訴されたり、株主代表訴訟で身ぐるみはがされたりするかもしれない。
 それでもアメリカのようにトップが桁違いの報酬を得ていたら、「地位高ければ責任重し」と割り切れるだろう。ところが日本では、社会的な地位・尊敬を含め、有形無形の報酬は減少する一方である。

 権力の暴走にブレーキを掛け、トップの不正を追及することが大事なのはいうまでもない。ただ、「国民感情」や「市民目線」のなかには単なる妬みや憂さ晴らしのように非合理なものが紛れ込んでいないという保証はないし、めぐりめぐって長期的にどんな結果を招くかまでは考えられていないケースも多い。
 どんな組織や社会にも優れたリーダーは必要であり、優れたリーダーを輩出するには、大多数の人にとってリーダーの地位が魅力的でなければならない。そうでないと、やがてツケは庶民に回ってくる。もはや、強者をたたけばよいという時代ではないことを肝に銘じておきたい。

(2014/7/31)
スポンサーサイト
  1. 2014/07/31(木) 21:12:24|
  2. 過去
  3. | トラックバック:0

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://ohtahajime.blog50.fc2.com/tb.php/170-254d8b23
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

最近の記事

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

リンク

このブログをリンクに追加する

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。