太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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「一円を笑う者は一円に泣く」か?

 コンビニで買い物をしたら財布に1円玉がなかったので100円玉から99円の釣りをもらう羽目になり、財布が膨らんでしまった。いつも細かいお金から先に使う習慣が裏目に出たのだ。かつて、スーパーのレジに箱を置いて、買い物をした客が一円玉を箱に寄付し、必要な人が使えるようにしたことをふと思い出した。このときはPTA関係者が「教育上よくない」と反対し、すぐ廃止になったと記憶している。
 たしかに1円でも大切にする精神は尊いし、日本人の美徳でもある。お金ではないが、農家で育った私は御飯を一粒も残さないよう育てられた。それはちょっとした自慢だが、食べ物を残さず食べることで食べ過ぎたり、体調を崩したりすることもある。
 1円を大切にする教育も、それにこだわりすぎると融通が利かなくなり、スーパーの例のように助け合いの精神が後回しにされるかもしれない。もっと大きな問題は、事の軽重を考える習慣が身につかないことである。いくら1円が尊いといっても、1円では何も買えないことは厳然たる事実である。それを教えることも教育ではなかろうか。
 1円を大切にする教育を受けてた日本人は、会社でも細部にこだわったり完璧主義になったりする。どんな仕事も手抜きせず、完璧にやろうとする精神は尊いかもしれない。一方、欧米にしてもアジアの国々にしても、会社では仕事を重要度に応じて選別したり優先順位をつけたりする。可能な範囲で合理的に働こうとするのだ。
 休暇も取らず長時間残業しても生産性が低い日本企業と、短時間働いて生活をエンジョイしながら生産性もあげている海外企業とを見ると、1円を大切にすることの両面性を教えるのも大切ではないかと考えさせられる。

(2016/1/25)
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  1. 2016/01/25(月) 17:41:58|
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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