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太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

「ほめられて不登校に・・・・・」という意外な事実

 学校でも、家庭でも、「ほめて育てる」教育が大はやりである。
 たしかに、ほめることにはさまざまな良い効果がある。私が中学校や高校、幼稚園などで行った実証研究でも、その効果は裏づけられた。たとえば幼稚園児では、意識的にほめたグループではそれ以外のグループに比べて「笑顔が増えた」「楽しそうになった」という効果が確認された。また中学生では、「自己効力感が高まった」「勉強が充実している」といった効果が明らかになった。

 ところが一方で、ほめることには意外なリスクがあることもわかってきた。学生に高校までを振り返ってもらった意識調査では、3分の1の学生が、ほめられたり評価されたりしてプレッシャーになった経験があると答えている。そこには生々しい体験がたくさん記されていた(拙著『「承認欲求」の呪縛』)。
 ある生徒は無遅刻無欠席を続けていたところ、親からたいそうほめられ、親は近所でそれを自慢するようになった。すると生徒はだんだんそれが負担になり、ついに学校へ行けなくなってしまった。そして欠席が続き、卒業も危ぶまれるようになったという。周囲から期待されて生徒会の役員になった生徒が、期待を過剰に受け止め、自ら命を絶ったという悲しい出来事もある。

 私が教えていた大学院生のなかにも、優れた研究をほめられた学生が突然大学に来なくなったという例が複数ある。小中学校の教育現場で話を聞いても、ほめられ、期待された児童・生徒が強いストレスから学校を休んだり、心身に不調をきたしたりするケースが少なくないそうだ。

 ほめられるのは、たとえていうと一種の負債である。債務を負うと、それを返さなければならないというプレッシャーを感じる。それと同じように、ほめられたり、期待されたりすると、それに応えなければならないという心理的負担がストレスにつながるのである。実際、叱られるよりほめられる方がストレスが大きくなる場合がある。

 けれども「ほめることは良いことだ」と信じ込んでいると、このような弊害に気づかない。その結果、知らず知らずのうちに子どもたちを追い込んでしまうのである。

 ほめることは大切だ。しかし、ほめ方によっては、それが大きなリスクをもたらすということを忘れてはいけない。
 連休明けには、ストレスらか学校に行けなくなる子があらわれやすいといわれる。そこには意外な原因も隠れていることを親も教師も知っておいてほしい。
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  1. 2019/05/07(火) 21:51:40|
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
『「承認欲求」の呪縛』(新潮新書) 
『「ネコ型」人間の時代』(平凡社新書)
『ムダな仕事が多い職場』(ちくま新書)
『なぜ、日本企業は勝てなくなったのか』(新潮選書)
『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)
『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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