太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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危険な連帯責任

 大学の運動部員による性犯罪が立て続けに発生し、部員が属する運動部は無期限もしくは長期にわたる活動停止を余儀なくされた。この種の対応を聞いていつも思うのは、犯罪自体は許されず制裁を受けるのは当然だが、部の活動を禁止(自粛でも同じ)させるべきなのかどうかということだ。高校野球などでも、部員や監督の不祥事によって対外試合や大会出場の禁止といった処分が下される。
 しかし、組織的な犯罪や不祥事ならともかく、まったく個人的な犯罪や不祥事の場合、同じ部に属するというだけでなぜ制裁(不利益)を受けなければならないのか。同じ釜の飯を食っていただけで、他の部員にどんな責任があるというのか。世間は活動自粛や対外試合禁止を軽く受け止めるかもしれないが、多くの部員にとって活動自体が生きがいであり、それに人生をかけている人もいる。実際、全国大会で活躍する機会が奪われることによって、大学へ推薦で入学する道や、プロ入りする機会が奪われる者も出てくるだろう。
 ①とばっちりを受けた仲間や関係者のこのように大きな不利益、②彼らの怒りによってさらなる苦痛を味わう事件・不祥事を起こした本人、③厳しい制裁を科すことで毅然とした姿勢を示し自らは無関係を貫く団体・連盟などの組織。責任の取り方や取らせ方が、はたしてこれでよいのだろうか。私はそこに釈然としないもの、そしてある種の陰湿さを感じる。
 さらに危険なのは、犯罪や不祥事を起こした者が属する組織や集団を色眼鏡で見る風潮に追い風を送ってしまうことである。実際に、そうした理不尽な差別や人権侵害はいたるところで発生している。北朝鮮による日本人拉致事件発覚後に多発した、在日朝鮮人に対するいじめや嫌がらせなどはその典型である。
 やや飛躍した印象を与えるかもしれないが、職場における男女差別などにも通じるところがないとはいえない。結婚や出産を機に早く辞めてしまう女性が多い。「だから女性は・・・」というわけである。
 いずれにしても、大切なの個人の責任を明確することであり、けっして無関係な者の人権を侵害してはならないということだ。事件の被害者の人権尊重はもちろんだが、間接的な被害者の人権にも十分な配慮が求められる。
 (2004.12.10)
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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