太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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論争なき文化

 古い専門書を読んでいると、その道の大家と呼ばれる人が、突然感情むき出しで特定の研究者を攻撃する場面に出くわすことがある。冷静な文体が急に幼稚になるのが滑稽で、思わず吹き出しそうになる。自分の主張、とりわけ大事にしてきた「ペット・セオリー」が批判されたことで冷静さを失い、専門書という場違いなところで意趣返しをしているのだ。たいした論争でもないのに、やるなら読者を巻き込まないでくれと言いたくなる。
 もっと滑稽なのは、学会などで若い研究者が「大家」の胸を借りるつもりで批判的なコメントをしたところ、相手が血相を変えて押さえつけにかかる姿である。新弟子が横綱に思いきってぶつかったところ、意外にも横綱が転んで狼狽しているようなものだ。
 研究者の世界はある面で階層社会である。大学や学会での力関係が網の目のように広がっているので、それなりの地位を築いた人に面と向かって批判する人は少ない。そのため本人は裸の王様になり、たとえ研究上の批判であっても冷静に受け止めることができなくなるようだ。相手にしてみれば、学問上の論争を挑んだつもりなのに感情的に反撃されてはたまらない。だから、そのうちに誰も相手にしなくなる。そして単なる骨董品に祭り上げられてしまう。
 巨人ファンもアンチ巨人も読売テレビにとって大事なお客さんであるのと同じように、自分の主張に賛同してくれた人も批判する人も大切な読者であり、広い意味では自分のファンだということを忘れてはならない。賛同者も批判者も、自分の主張に関心をもち、議論の場に入ってきてくれているのだから。まして合理的に考えた場合、批判をしてもらった方が自分の研究にも役立つことが多い。それを知っている狡猾なライバルは、敵に塩を送るような建設的批判はあえて避け、とるに足らない長所を褒めちぎり相手を誤った方向へ誘導しようとすることさえある。
 私はもちろん建設的な批判を心から歓迎している。ところが残念ながら、それが相手にうまく伝わらないことがある。著書や論文などで批判してもらったのでお礼を言うと、それきり批判されなくなってしまう。想像するに、相手は私が皮肉でお礼を言っていると勘違いされたのではなかろうか。建設的な議論を戦わせる文化が根付いていないのは残念だ。
(2005.2.17)
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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