太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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キレる子

 今日の新聞によると、キレる小学生がここ数年増加しているという。頭がキレるのならいいが、いうまでもなく気持がキレるのである。小学生にかぎらず、最近キレる若者が増加した背景について、家庭でのしつけ、教育環境、偏差値社会、テレビゲームの氾濫、さらにはカルシウム不足といった理由まで持ち出されている。
 キレる若者、登校拒否や引きこもり、ニート、早期離職・・・。それらの増加原因はいろいろあるだろうが、大事な視点が欠落していると思う。誤解を恐れずに言うと、彼らがそうした行動をとるのは、そうした方が「トク」だからだ。もちろん得か損かというのはお金だけではなく、社会的、心理的なさまざまな正と負の誘因を総合して「トク」だからという意味である。
 キレるのは瞬間的だから、損得などは計算していないという人がいるかもしれない。しかし、キレたら大変だとふだんから自覚していたらけっして人前でキレることはなかろう。その証拠に、キレても許される友人、親、教師たちの前ではキレる子も、ほんとうにコワい人たちの前でキレることはない。要するに、キレることで一時的にせよ状況が改善したり快感を味わえたりするからキレるのである。だから、やはり「甘やかし」と無関係ではない。
 登校拒否や引きこもりにしても、学校や外の世界より家庭の方が居心地がよいからそうしているという面があることは否定できない。イジメの深刻化を原因としてあげる教育関係者も多いが、イジメは昔の方が今よりはるかにひどかったと思う。それでも学校に行ったのは、家庭も世間も、学校へ行かないことに対して今ほど寛容ではなかったからだろう。
 大人の世界も同じだ。昔、ある職場に、しばしばキレて周囲に怒鳴り散らす人がいた。だれも関わりたくないので相手にしないと、それはますますエスカレートしていった。ところがあるとき、それを目撃した幹部がみんなの前で厳しく叱った。それを機に彼はけっしてキレることがなくなったことを思い出す。
 気に入らないとちゃぶ台をひっくり返す父親や、ゼミ生の発表がなってないと灰皿を投げる教授もいなくなった。今ならすぐに離婚や「アカハラ」の問題になりかねないからだ。
 念のために断っておくが、キレる子の増加にしても、登校拒否や引きこもり、早期離職にしても背後にある社会的な問題を直視し、それを解決することが不要だといっているわけではない。それはそれで大いに議論しなければならない。
 しかし、得か損かという人間の行動を左右するいちばん単純な要因に触れることを避けていたなら、議論が恣意的に流れ、こうした社会問題も自分の主張を正当化したり利益を追求したりするための手段として利用される恐れがある。だから「身も蓋もない」話だがあえて問題提起したいのである。

(2006.10.2)
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  1. 2006/10/02(月) 09:32:37|
  2. 2006年
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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