太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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競争と取引コスト

 福島県、和歌山県と現職知事がつぎつぎに逮捕されるなど、「官製談合」の発覚で自治体が揺れている。談合を防止するには、すべて一般競争入札にすればよいではないかという意見もある。しかし、そうすると過当競争になり劣悪な工事が増えることも予想され、質の低下をいかに防止するかという問題が生じる。そして、もう一つの問題は経済学でいう取引コストの増大である。
 大学では近年、教員を採用する際に公募方式を取り入れるのが普通になってきた。この人に是非来てもらいたいという人を「一本釣り」するよりも、国内外に広く公募するほうが公平かつ客観的だし、優れた人材も得られるだろうと考えるからである。
 ところが実際には、優れた人材の獲得という点で必ずしもベストな方法とはいいきれないようだ。公募方式だと、ダメもとで応募する「泡沫候補」が少なくない反面、大物はあまり応募してこないといわれる。それは、応募するには膨大な資料をそろえる必要があるし、応募した事実が知られる(すなわち現職場への忠誠心・満足度が低いことがバレる)リスクがまったくゼロではないからだ。そして、せっかく応募しても採用されなければ自尊心も傷つく。これらは広い意味での「取引コスト」にあたる。大物になるほど現在の職場における就業条件もよいのが普通なので、それだけのコストをかけてまで応募する気にはならないのだろう。
 インターネットの普及によって取引コストは格段に低下したように見えるが、現実にはまだ有形無形のコストが存在している。自由競争を推進する際に忘れてはならない点である。

(2006/12/6)
 
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  1. 2006/12/06(水) 09:30:11|
  2. 2006年
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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