太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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ホワイトカラー・イグゼンプションについて

 拙著『お金より名誉のモチベーション論』(東洋経済新報社)でホワイトカラー・イグゼンプションを導入したらかえって残業は減るのではないかと述べた。それに対していろいろなところから賛否両論が寄せられている。どちらかといえば反対意見の方が多いようだ。その大半は労働組合の関係者からのものである。
 反対意見の主旨は、現状でさえ残業が長くサービス残業も横行するなかで残業代を支払わずにすむ制度を取り入れたら、残業がいっそう長くなるに決まっているというものだ。たしかに常識的に考えればそのとおりだろう。裁量労働制度を取り入れた事業所では、会社にいる時間がかえって長くなったというデータもある。
 それでも私は、導入に賛成する立場をとり続けたい。もちろんいくつかの条件つきではある。その条件については昨年、日経産業新聞の紙上で述べたのでここでは割愛する。
 繰り返すまでもないが、日本の長時間労働は異常だ。ただ私がいちばん問題にしているのは、その背景にある帰りにくさ、休みにくさである。
 首都圏に住む幼児の父親の平均帰宅時間は午後11時台(北京、上海、台北などは6時台か7時台が最多)。帰りにくいだけではない。最近は超過勤務が朝にシフトし、業種によっては朝6時前後から出勤している会社もある。また有給休暇の取得率は平均47%(欧米をはじめ他国は100%近い)。こうしたわが国の突出した数字を見ても、それが単に仕事の忙しさだけでないことは想像できる。そして帰りにくさ、休みにくさの最大の原因は、拙著で述べたように日本の社会・組織に特有な<裏の承認>の厳しさにあると考えられる(インタビューでもそれを支持する声が支配的だった)。
 感情的な反批判ととられると心外だが、労働組合側に対しては、これほど異常な実態を改善できない現状のもとで、制度改正に反対する資格があるのかと言いたい。改革に反対することは現状を認めていると受け取られてもしかたがない。
 ホワイトカラー・イグゼンプションについては「残業代ゼロ制度」というレッテルが貼られたことにも表れているように、裁量労働制の延長との見方がある。しかし裁量労働制はあくまでも時間管理の対象であるのに対し、イグゼンプションは対象外という根本的な違いがある。働く側からすると、裁量労働制では依然として評価されるために長時間会社にいなければならないという心理が働くが、イグゼンプションのもとではいくら会社にいても評価はされないのである(むしろ光熱費などのコスト増につながる)。したがって、裁量労働制度のデータを持ち出し、ホワイトカラー・イグゼンプションがそれと同じように長時間労働に拍車をかけると主張するのはおかしい。
 <裏の承認>に厳しいわが国の風土を考えると、帰りにくさ、休みにくさを緩和するには、時間で評価される、時間に対して報われるという観念を払拭するしか方法はないだろう。ホワイトカラー・イグゼンプションがベストな制度だとは思わないが、大胆な手を打たないかぎり現状は変わらない。

(2007/2/28)


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  1. 2007/02/28(水) 10:30:35|
  2. 2006年
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
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コメント

ご無沙汰しています

取材の折はたいへんお世話になりました。
賃金は労働時間に比例するものではないと、常々思っていました。
時間に比例するのではなく、達成された成果に比例するものだと。
賃金を時間に結びつける発想からの転換が必要だと思っています。
  1. URL |
  2. 2007/03/08(木) 22:09:11 |
  3. 赤塚 洋 #c/HYxa/Q
  4. [ 編集]

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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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