太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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「裏承認社会」日本が危ない!

 労働者生活と人事システムの調査のため北欧に来ている。ヘルシンキやストックホルムの街を歩いていて気がつくのは、個人の胸像が多いことである。それが美しい風景にとけ込んでいて、街を有機的にしている。この胸像が象徴するように、こちらでは個人の功績を讃える精神が市民の間に浸透しているようだ。人口的には小国である北欧諸国は、国際社会における存在感を高めるため企業も政府も「人を育てること」に力を入れている。
 翻ってわが国をみると、あいかわらず「出る杭を打つ」ことにばかり熱心だ。政治家は失言やスキャンダルでつぎつぎに引きずりおろされ、「身体検査」を受けたはずの大臣までが退陣に追い込まれる。警察官、教員、一般公務員はマスコミや一部市民の厳しい目にされされ、どんなに立派な仕事をしていても小さな不祥事一つで即アウトになる。
 これでは、問題は起こさないが大きな仕事もしない政治家や公務員ばかりになりはしないかと心配だ。経済界ではホリエモンや村上ファンド、それにコムスンなどの事件によって、若手起業家たちは萎縮してしまった。朝青龍が追い出された大相撲は、迫力がなくなり観る気がしなくなった。そのほかの世界でも似たり寄ったりだ。
 他の国が、「人こそ資源」と個人の業績を讃え、伸ばそうとしているのに、経済大国の意識がいまだ根強いわが国では、そうした危機感がない。出る杭を打ち、他人の足を引っ張っていても社会は安泰だと信じこんでいる。しかし、政治の分野でも経済の分野でもわが国の存在感は確実に低下している。研究や学問の分野でも、欧米諸国の水準とは大きな開きがある。
 個人の優れた功績やすばらしい個性を讃える「表の承認」より、規律や序列を守り、和を乱さないことを重視する「裏の承認」が支配する日本。若いサラリーマンや学生の態度・行動を見ていると、その傾向は薄れるどころかむしろ強くなっている感じがする。
 もちろん、出る杭を伸ばすだけではだめで、社会のすみずみで地道に働いている人や縁の下の力持ちにも光を当てなければならないが、いまの日本社会はそれさえできていない。なんとかして流れを変えられないものか。近著『承認欲求』では、この難題に蟷螂の斧を振りかざして立ち向かう。

(2007/9/15)
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  1. 2007/09/15(土) 16:08:38|
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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