太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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禁欲の難しさ

 音楽といえば昔の歌謡曲やフォークソングくらいしか興味のない私は、いわゆる懐メロ番組が放映されると録画して後で楽しむことにしている。それを聴いていて気がつくことがある。一方には何十年も前にヒットした一曲だけを歌い続け、「○○(曲名)の某」という名声を確立している人がいるかと思えば、他方にはかつて大ヒットした曲があるにもかかわらず今でも新曲をつぎつぎ歌い続けている人がいる。その努力にはある面で敬服するが、残念なことに彼らの多くは昔の大歌手というイメージを失ってしまっている。
 戦略的に考えるなら、ヒットした一曲だけを歌い続ける方が得だろうが、それには強い禁欲が必要だ。自己実現欲求などというと抽象的だが、だれでも新しいことに挑戦したいという欲動を抑えることは難しい。すっかり衰えた容姿と声で、ヒットするはずのない新曲を熱唱しているのを目にすると、人間の悲しい性を見せつけられている気がする。
 元大関が、平幕に陥落後も長く相撲を取っていると「名大関」のイメージは薄れるし、総理大臣経験者がテレビのワイドショーで軽々しい発言をしていると、「本当に総理だったのか?」と自分の記憶を疑うことさえある。「人間、引き際が肝心」というのは、せっかくのイメージを壊さないためでもあるのだ。
 それらと同列に扱うつもりは毛頭ないが、最近問題になっている老舗企業の不祥事にしても、拡張戦略で墓穴を掘ったと言えなくもない。のれんを大切に守りながら地道な経営を続けておれば、おそらくこんなことにはならなかっただろうに。
 つねに挑戦し続ける人は、いろいろと理屈をつけて周囲と自分自身を納得させようとするが、結局は自分の欲動を抑えられないだけかもしれない。自己実現欲求は世俗的な成功に必ずしもプラスにならないばかりか、ときには身を誤らせる。それを考えれば、自己実現欲求をコントロールできることも矜持の一つといえるだろう。

(2007/10/30)
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  1. 2007/10/30(火) 10:29:41|
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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