太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

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「情報はタダ」の怖さ

 わが国では会社でも役所でも、職場での「情報共有」はごく当たり前のことと考えられている。部下が知り得た情報を上司に知らせなければお目玉を食らう。そして上司は部下から得た情報を当然のことのように横取りしてしまう。情報というものの価値がそれだけ軽くみられている証拠である。
 このような社会では、だれもアイデアを出さなくなったり、逆にすぐれた情報は独り占めされてしまうことになる。産業界では最近、コンピテンシー(行動評価)という評価や能力開発の手法が急速に普及しているが、模範的な行動をモデル化する際にはいわゆるハイパフォーマー、すなわち高い業績をあげている社員にインタビューなどを行って、仕事のコツや勘所を探ろうとする。しかし、仕事のコツや勘所はその人が苦労して身につけた知的財産であり、個人の企業秘密である。それを無償で手に入れようとするのはあまりにも虫がよすぎるのではなかろうか。
 もっとも、自ら進んで情報を提供しようとする人にはそれなりの計算があるようである。過日、ある経営者が自社の経営のノウハウを惜しげもなく公表し、「わが社のまねをすることはできるが追い越すことは決してできない」とうそぶいていた。しかし世の中にはこのように気前のよい人ばかりではなく、なかには攻撃的な防御策を講じる人もいる。昔みた映画につぎのような話があった(記憶違いがあるかもしれない)。主人公の父はかつて、盗作の濡れ衣を着せられて疑いを晴らせぬまま自殺してしまった。父を自殺に追い込んだ「犯人」に復讐を誓った主人公は、密かに「犯人」へ接近し偽りの交友関係を結んでいく。そしてある時彼女は、「犯人」に小説のネタを提供する。実はそのネタは彼女のオリジナルではなく、別の作家の小説そのままだった。そうとは知らず自分の小説に使った「犯人」は、当然ながら社会的制裁を受け、文壇から追放されてしまう。
 ここまで計画的ではないにしても、気前よく情報提供してくれる人のなかには(おそらく)意図的に誤った情報を混入している人がいる。本人は内心してやったりのつもりかもしれないが、信用あるいは信頼という貴重な財産を自ら手放していることに気づいていない。
 創造の意欲をそぐのも、情報を独り占めするのも、そしてこのような一種の自殺行為を引き起こすのも、正当な対価で情報を交換するというルールや慣行ができていないためである。経営のノウハウの公表を惜しまなかった上述の経営者も、残念ながらその後倒産に追い込まれてしまった。ソフト化、情報化の時代に入った今こそ、情報の価値をあたらめて認識すべきであろう。
 (2002)
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  1. 2001/11/30(金) 12:31:04|
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プロフィール

太田 肇

Author:太田 肇
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
◆最新刊 『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社)

『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社)
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣)
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘)

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

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