fc2ブログ

太田肇 Critical Essays ”個の視点”

同志社大学政策学部教授 (個人尊重の組織論、モチベーション論)  日常生活のなかで疑問に感じたとき即座に書いたものがほとんどです。不完全な内容や思い違いがあるかもしれませんが、お許しください。

これって美談?

 世界遺産に登録されているフィレンツェの大聖堂に日本人学生が落書きした問題で、学長と当人の学生が現地を訪れ、謝罪するとともに保全のための寄付をした。大聖堂側は、「勇気ある行動に感銘し」落書きを消した箇所に校名の入ったタグを作る意向だという。そしてフィレンツェの副市長は、「文化を大切にする日本人の意思と厳しい態度に考えさせられた」と話したそうだ(以上、新聞記事より)。
 これを読んで滑稽な気がしたのは私だけではなかろう。
 そもそも、ほんとうに「文化を大切にする日本人」なら、世界遺産に落書きをするだろうか? 副市長の言葉を痛烈な皮肉ととるのが普通の感覚に思えるのだが・・・・・。そして、わざわざ私費で現地を訪ねて謝罪と寄付をした行為が、どれだけ自発的だったのかという疑問がわく。これだけマスコミに騒ぎたてられ、バッシングされたら、これぐらいせざるをえなかったのではなかろうか。落書きした高校野球の監督を解任した処分にしても、別の大学での停学処分にしても、マスコミが騒がなかったら、これほど厳しく処分しただろうか。そう考えたら、副市長が評価?した日本人の「厳しい態度」は、何を意識した、何のための厳しさだったのかと考えさせられてしまう。
 これもまた日本社会特有の「空気」の力をあらためて感じさせるニュースだった。

(2008/7/10)
スポンサーサイト



テーマ:社会ニュース - ジャンル:ニュース

  1. 2008/07/10(木) 22:40:25|
  2. 過去
  3. | トラックバック:0

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://ohtahajime.blog50.fc2.com/tb.php/98-832d6ab9
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

太田 肇 (Hajime Ohta)

Author:太田 肇 (Hajime Ohta)
<ホームページ>
http://www.eonet.ne.jp/~ohtahajime/
※Twitter, FB, Instagramも。

<職業>
「組織学者」としておきます。

<主な研究分野>
組織論
とりわけ、「個人を生かす組織・社会」について

<肩書き>
同志社大学 政策学部・大学院総合政策科学研究科教授
経済学博士

<著書>
『何もしないほうが得な日本』(PHP新書)
『日本人の承認欲求』(新潮新書)
『同調圧力の正体』(PHP新書)
『「超」働き方改革』(ちくま新書) 
『「承認欲求」の呪縛』(新潮新書) ※韓国版も出版 
『「ネコ型」人間の時代』(平凡社新書) ※韓国版も出版
『ムダな仕事が多い職場』(ちくま新書)
『なぜ、日本企業は勝てなくなったのか』(新潮選書)
『最強のモチベーション術 人は何を考え、どう動くのか?』(日本実業出版社) ※ベトナム版も出版
『個人を幸福にしない日本の組織』(新潮新書)
『社員の潜在能力を引き出す経営』(中央経済社)
『がんばると迷惑な人』(新潮新書)
『子どもが伸びる ほめる子育て』(ちくま新書)
『組織を強くする人材活用戦略』(日経文庫)
『表彰制度』(日本表彰研究所との共著 東洋経済新報社)
『社員が「よく辞める」会社は成長する!』(PHPビジネス新書)
『公務員革命』(ちくま新書)
『承認とモチベーション -実証されたその効果-』(同文舘)
『「不良」社員が会社を伸ばす』(東洋経済新報社)
『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)
『認め上手  -人を動かす53の知恵-』(東洋経済新報社)
『認められる力』(朝日新書)
『日本的人事管理論』(中央経済社)
『承認欲求』(東洋経済新報社) ※韓国版も出版
『お金より名誉 のモチベーション論』(東洋経済新報社)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社)
『認められたい!』(日本経済新聞社)
『「個力」を活かせる組織』日本経済新聞社)
『選別主義を超えて』(中公新書)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)※中小企業研究奨励賞本賞
『個人尊重の組織論』(中公新書)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書)
『囲い込み症候群』(ちくま新書)
『仕事人(しごとじん)の時代』(新潮社)
『仕事人と組織』(有斐閣) ※経営科学文献賞
『日本企業と個人』(白桃書房)
『プロフェッショナルと組織』(同文舘) ※組織学会賞

<生活信条>
できるだけ人に迷惑をかけないこと。恩を忘れないこと。

最近の記事

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

リンク

このブログをリンクに追加する

RSSフィード